「ミスト」感想・考察~獣より怖いのは、私たち人間ね~

 2008年にアメリカで公開された、「ショーシャンクの空に」「グリーンライン」らの生みの親、フランク・ダラボン監督の名作ホラー映画「ミスト」。感想・考察を述べます。見視聴の方は閲覧をご遠慮ください。。。

 広告にある「衝撃のラスト15分」という、正直安っぽい(笑)キャッチコピーを軽々超える絶望感を味わいました。。同時に、追い詰められた人間の怖さや、適切な判断とは何か?など、大事なテーマも考えさせられます。

  あらすじ

 真夜中に嵐が吹き荒れた翌日、破損した家屋を修復するべく息子を連れてスーパーマーケットへ出かけた主人公デイビッド。買い物の最中、外は街一帯を埋め尽くす不気味な濃霧に包まれ、中に突入していった人は皆、おぞましい悲鳴と血肉がちぎれる音と共に倒れる。店を完全封鎖するも、店内ではいざこざが絶えない。

 バックヤードでのタコ型怪獣の襲来を皮切りに、夜には巨大虫とドラゴンの襲来、宗教叔母さんが聖書の教えを説いて回り不安におびえる民衆を率い、生贄を名目に罪のない人を殺害するなど。。。

 店内の険悪な雰囲気な耐え切れなくなったデイビッド一行は、仲間を獣の襲撃で失いながらも車で行く当てのない避難を敢行。ガス欠を起こすまで走り続けるも周囲は依然霧に包まれ、周囲からは獣が蠢く音。。。

 苦しんで死ぬよりは。。とデイビッドは仲間4人を射殺し安楽死。自分用の銃弾が切れたため、獣に命を差し出そうと車を降り

 

「Come on,Come on!!!」

 

と繰り返し叫びやってきたのは、見るに堪えない怪物。。。。。。。

ではなく住民を乗せた米軍の戦車の渋滞。。。。。。

 あまりの急展開に我々鑑賞者は見るに堪えないデイビッドの断末魔を聞き。。終了。

鑑賞後は感情がすっぱ抜かれて虚無な気分になったのはきっと僕だけではないはず。

 

  背景

 原作は小説なのだが、衝撃のラストは異なるものとなっている。デイビッド一行が店を脱出する場面までは一緒なのだが、原作では射殺のバットエンドではなく、避難中に車内のラジオで「ホープ」という街で被害者の保護を行っている旨の情報を得て、全員が助かる、という流れに。

  原作者のスティーブン・キング氏も、監督の結末変更の一報を受け快諾したそうな。

個人的には映画の結末が好きです。。。あの絶望感を味わわせてくれた監督に感謝。

 

  集団心理の怖さ

 「ミスト」の代名詞に、集団心理の怖さも挙げられる。宗教叔母さんが周囲を扇動し民衆を取り込む様は胸糞悪いったらありゃしない。軍隊のお兄さんを生贄に祭り上げ殺害なんて見てられん。あのシーンでナイフを突き立てた叔父さんは、一人じゃ絶対にこんな大胆な行動は出来ないだろうなと思いながら見てしまう。

 

 しかし。。。こういった胸糞悪さを抱けるのはあくまで映画の外から客観視出来ていたからに過ぎないのだろう。自分が店内で身ごもっていたらどの派閥に属しているのだろう?と想像しながら見るのも面白い。僕は無神論だから店の隅っこの方で傍観しているかも。そもそも日本で同じ状況に陥ったら、何を公約に掲げる人が民衆を煽って率いるのかな。。。知識が増えたら考察してみたい。

 

  「ゴジラより怖いのは、私たち人間ね」

 ピンときた人もいるはず。シン・ゴジラの緊急対策本部の尾頭さんが発した金言である。今作をみて僕の脳内で不覚にも湧き上がってきたセリフだ。

 

 窮地に追い詰められた人間が本性を現す、とはまさにこの事。唯一、初志貫徹していたのは、胸糞・心証最悪の宗教叔母さんだけかも(笑)

 

  デイビッドの最期

 鑑賞者もろとも絶望の淵に叩き込んだラストシーンについては、最後まで生きる希望を失ってはいけなかった!スーパーに残っていれば!子供が起きていたら引き金を引かずに済んだかも!と様々な憶測がなされている。

 

 僕の考えるデイビッドの最大の敗因は、

妻を家に置き去りにし心の安寧を保てなかった事、と考えた。

 心身ともに大きな負担がかかったデイビッドを最も癒していられるであろう妻が傍にいれば、話を聞くなりハグなりでリラックスし、冷静な判断が出来るほどの余裕が生まれたかもしれない。また子守を2日間女手無しでこなしたのも一因。

 

 無茶をして隣の薬局に遠征したり、店から脱出せずに待機していれば、最後は戦車で避難する結末を迎えられた。。。と考えると、家族って知らず知らずのうちにメチャクチャ支えられ、支えているんだな。。。

 

 また、車ガス欠で一斉射殺。。の最大要因は、妻の死を確認したためだろう。店を出た最大の理由は、元気に生きている妻の顔を見たい、また息子に見せてあげたい一心だった。最後の希望を失ったデイビッド、引き金を引く瞬間の彼はさぞかし

「もうこれで、、、終わってもいい」状態だったろう。

 霧が発生して真っ先に店を飛び出したマダムが子供たちと戦車に乗り、こちらを眺める描写もあった。なんて日だ。3150かよ。

 

  まとめ

 面白い考察をしていた方がいたので共有を。生物学的視点から、登場した獣たちはあながちファンタジーだけの脅威だけでないんだよ。近未来的に沸いて飛んでいてもおかしくないんだよ、と。ぜひご一読を。

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 ホラー映画の金字塔「ミスト」から、本性が露わになった人間の恐ろしさ、余裕を持った状態で判断を下すことの大切さ、そして最後まで諦めてはならないことを教訓として学べた。

  グロ注意な作品なので好き嫌いが分かれるだろうが、是非皆に見てほしいと自信をもって紹介できる作品。