「百円の恋」感想・考察 ~Hungry Angry~

 あらすじ

 

 とある弁当屋の長女、自他共に認めるダメ女の一子(いちこ)が、実家を追い出されたことをきっかけに一人のダメボクサーと出会い、恋し、彼女なりに成長する物語。最初は彼に憧れ半分、自分を変えたい思い半分の、決意の固まらないままなんとなく始めたボクシング。しかし、初めて抱かれた男との別れをきっかけに、憎しみやくやしさをバネに本気でボクシングに打ち込む。心身ともに目覚ましい進歩を遂げる。

 

 ジムのトレーナーの「いい左(フック)持ってますよね。」といった声もあり、徐々に自信をつける一子。周囲の反対を受けるも、プロの試験を受験し合格。試合でも上手くやれるのでは、と意気揚々と挑んだ初試合では、最終ラウンドまで一矢も報えずに防戦一方。ジムの館長からも「次に倒れたらタオル投げるからな。」(外野からの強制試合終了の意)と釘を刺されるなか挑んだ最終ラウンド。意識朦朧の中、今までさんざんかわされてきた十八番の左フックを入れるも、カウンターで完全ノックアウト。

 

 最後の、恋人の前で泣きじゃくるシーンは、この映画を締めくくるにふさわしいシーン。仕事、恋愛、自立。あらゆる勝負から逃げてきた彼女が初めて壁にぶつかり味わった「敗北の味」に涙が止まらなった。

 

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ポイント1~安藤サクラの名演技~

 

 この映画、撮影期間はたったの2週間。一子の劇的な体系変化があったにも関わず。。。太っていた廃人期を撮影開始の4日間で、残りを10日間で撮りきる超絶ハードスケジュール。安っぽいタイトルとは裏腹になんというヘビーさ。役者魂ここに極まれり。

 一子の変化に着目する際に身体に目がいきがちだが、あえて「目」に注目したい。焦点が合わないぼんやりとした廃人の目から一変、ボクシング中の獲物を捕らえる猪のような眼光。減量や過酷なスケジュールにも関わらずこれまでの変化は流石といわざるを得ない。

 

ポイント2~Hungry Angry~

 

 ボクシングジムに掲げられたテーマ。

 

まとめ

 

 アカデミー受賞作品に選ばれるのもうなずける名作。今はしょぼくれていても、何でもいい。一歩でも行動を変え、世の中と勝負する力をもらえる。行動原理が現実に満足できない飢えや怒りでもいい。「Hungry Angry」の精神を持ちたい人におすすめだ。